
泣かぬ鼠が身を焦がす
第36章 一生添うとは
それからそこの教会というか結婚式場? に併設されていたレストランで食事をして、予定通り帰路に着いた
「いつまで眺めてるんだ?」
窓の外を流れる景色が段々都会に近づいてきた頃、車を運転しながら拓真さんが俺にそう言った
俺が眺めてたのはもちろん拓真さんに貰った指輪なんだけど
「いいじゃん。嬉しいの」
ずっとここにあるのってなんかむずむずする
「顔、にやけてるぞ」
「いいの。拓真さんしか見てないんだから」
あの時出された養子縁組届は、サインだけあの場でして今度提出しに行くみたい
それも一緒に行くぞ、なんて言われて本当に結婚みたいだってドキドキする
「旅行楽しかったか?」
拓真さんがふと俺にそう聞いてくる
俺はすぐさま「うん!」と答えた
「すげー楽しかった。収穫も盛りだくさんだし」
「収穫?」
「拓真さんの知らなかったこととか。指輪とか」
俺がそう言うと拓真さんがふ、と笑みを漏らした
「そうか」
「でも拓真さんは疲れちゃったんじゃない?」
「? どうしてそう思うんだ?」
え、だって
「旅行中も仕事してたし、運転続きで疲労感出てたから」
