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泣かぬ鼠が身を焦がす

第37章 好いた鼠は泣いても連れる


分厚い本の真ん中ぐらいのところを開くと、そこにはやっぱり新しい書き込みがあった


考えてみれば、よくこんなに書いたよなぁ
不満ばっかりなわけじゃないけどさ


で、なんだって?


ノートには拓真さんに似た真面目そうな文字で


『秘書課の女性に愛想を振りまき過ぎだ』


と書かれている


「ぶふっ……」


あまりに可愛い内容過ぎて思わず吹き出すと、お風呂にいるはずの拓真さんから抗議されてるように感じた

俺は胸ポケットから拓真さんに第1秘書になった時に貰ったボールペンを取り出す

そして一度ベッドに腰掛けて


『仕事だから無理! でも、気をつける』


と書いて、少し考え込んだ後更に


『拓真さんも今日の取引先の人に笑いかけ過ぎ』


と毒づいてみた

また鍵をしたノートを元の場所に戻して着ていたスーツのジャケットを脱いでいると、拓真さんがお風呂から戻って来る


「おかえり」
「あぁ」
「じゃ、俺もお風呂入ってくる」


そう言うと拓真さんが俺に近づいて来て、頭にキスをした


ワックス付いてんのに
もー……


「顔赤いぞ」
「……うるせー」
「ふ、早く入ってこい」


わざわざ赤いとか言わなくてもいいのに
意地悪

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