
泣かぬ鼠が身を焦がす
第1章 濡れ鼠
んん?
何首かしげてんの?
「まさか、わかんない……?」
「……」
こくん、と頷く社長さん
「あははっ、真面目そうだもんねぇ。ウリってのはぁ……」
俺は社長さんの太腿に跨って腰を擦り付けた
「お、い……!?」
「カラダで仕事してたってこと。住ませてもらう代わりに、セックスしてたの、俺」
「!?!?」
驚いてる驚いてる
今日だけで何回そんな顔するんだろうねー?
「……だから、家がないのか?まさかあんなところで倒れてたのも……」
「そ。前の飼い主に捨てられちゃって、行く宛もなく倒れてたってわけ」
「そう、だったのか…………」
「……?」
えーなんで黙ったの
そんな同情とかいらないんだけど
慣れてるし
「だから俺早く次の飼い主探さないと食べていけないの。家もないから送ってもらう必要もないし、見たところあんたは俺みたいなの必要としてる感じでもないし?こっから出ーしーてー」
俺が腕をぐいぐい引っ張っていると、社長さんの携帯が鳴った
「!」
「俺だ。ーーすまない、今行く」
短くそう言ってすぐに電話を切った社長さんが俺の方を向いた
「悪いがもう行かなくては。お前は…………」
「?」
