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ちよこれいと

第1章 ちよこれいと

「チョコ、いらない。オルカ、ちょうだい」

はい?
私?
あげません!

ひとまず後ろに下がろうと、右手をラグについて。先輩の左手に上から掴まれた。
グンと一気に身体が近付く。その勢いに気圧されて私は後ろに倒れてしまった。

あ……
マズい!

先輩が右手を私の顔のすぐ脇につく。覆いかぶさるように上から見下ろしてきた先輩は……少し眉ねを寄せて、何処か辛そうにも見えた。

いつも笑顔の先輩のそんな表情を見るのは初めてで、近づいてくる先輩を押し返すことも、顔を背けることも出来なかった。

先輩?

静かに重なったのはおでこ。

触れ合う直前、反射的に瞼を閉じて。何も言わない先輩にそっと開ける。目の前にある先輩の顔。閉ざした瞼を縁取る長い睫毛。

心臓が飛び跳ねた。

…………キス、されるかと思っ

「オルカ、キスしても良い?」

っ!?
えっ?何で?
それ、聞く?
この体勢で?

「だっダメです」
「だめ?」

目を閉じて、おでこくっつけたまま何聞いてるんです?

「ダメです」
「ちょっとだけ?」
「ダメです」
「かるーく」
「ダメです」
「触れるだけ」
「ダメです」
「舌入れないから」
「ダメ、です!」

強くはっきり言い切ると、先輩はこれ見よがしに大きなため息を吐いた。
アールグレイの息が唇に掛かる。

あぁ、心臓が……破裂しそう




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