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ちよこれいと

第1章 ちよこれいと

カチンと来た。
だから

「置いて帰りますから、どうぞ召し上がってください」

少しわざとらしいほどに丁寧な口調になって。

そんなにチョコが欲しいんですか?
バレンタインにチョコなんて、製菓会社のイベントでしょう?
その手を早く放してください。

「オルカから、ちょうだい」

先輩は放すどころか、しっかり握って帰らせてくれない。

「ただのチョコじゃ意味がない。オルカのチョコ、オルカからもらいたい」

……

それはどういう意味ですか?

腕に伝わる先輩の体温。
ゆっくりと振り返って。思いがけず真面目な目で先輩が私を見上げてる。

ドクンと大きく心臓が高く鳴った。

真っ直ぐ私を見て言葉を紡ぐ。

「さっきは調子に乗ってごめん。オルカがうちにいるのが嬉しくて。何もしないって言ったのに、触りたくて抑えられなかった」

…………

それは……?

「俺 オルカが好きなんだ」

……先輩が、私を……好き?

「ね、オルカ。チョコ、ちょうだい」

そう言った先輩は優しい、優しい笑顔になった。
トクトクと走る鼓動。思わず、見惚れて。

「……あ、は、はい」

……先輩が、私を……好き。

ホント、に?

あぁ、チョコ。
チョコ渡さなきゃ……

ふわふわと心ココにあらず。

少し屈んで、コンビニの袋に手を取って。その場に座り込んでしまった。

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