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ちよこれいと

第1章 ちよこれいと

「……オルカ」

さっきとは違う擦れた声で先輩に呼ばれた。
眉ねがキュッと寄っている。

「俺……わりと遊んでるし、信じられないと思う。……けどね、俺、本気だよ」

珍しく、余裕の見えない先輩の口調。

…………
本気?
本気の好き?

それは今日だけじゃないですよね?

なかなか素直に受け取れない。

先輩がゆっくり起こしてくれた。真正面に正座して、真っ直ぐ私の顔を見る。

「芹沢織歌さん、俺と付き合って」

フルネーム、知っててくれてたんだ……

付き合ってって言葉より、名前をフルで呼ばれて嬉しい。それっておかしい?
先輩は女の子を下の名前にちゃん付けで呼ぶ。馴れ馴れしいとかじゃなく、識別番号みたいな感じ。
『女の子−オルカ』じゃなくて『芹沢織歌』
あれ、でも私、あまりちゃん付けされてない……かも。

「織歌?」

思考に沈んでいた私を先輩の声が引き上げる。

返事、しなくっちゃ

「それって、浮気されません?」

何て失礼で可愛げのない返事。

「あのね、確かに色々してきたよ。してきたけれど、二股掛けたことないし、織歌と一緒にいて他もなんてあり得ないから」

また眉をひそめて、心外だと言いたそう。
その苦々しそうな顔を見てたら、ようやく先輩の言葉が心に馴染んだ。

私をちゃんと好きなんだ……

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