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ちよこれいと

第2章 おまけ

明らかに強張った織歌の笑顔。
玄関の中を凝視したまま固まった。

ま、そうだよね。
織歌男の家とか初めてっぽそうだし、おまけに誰もいないしね。

俺はただ、待つしかない。
織歌から俺に近付いてくれるのを……

どれくらい経っただろう。ほんの数分かもしれないし、十分二十分経ったかもしれない。
風に押されるように、織歌が一歩踏み込んだ。
それが落ち葉を追っての事だとは分かっていたけれど。逃れられないよう、急いでドアを閉めて鍵を掛けた。

……捕まえた

後ろから耳元に口を寄せて

「いらっしゃい」

織歌の隣を擦り抜けた。
玄関の灯りを点けて、スリッパを出しても当然織歌は動かない。

「中、エアコンつけてくるから、上がっておいで」

そう言って織歌の鞄を一緒に持って入った。
エアコンのスイッチを入れて振り返る。スリッパを見詰めたまま織歌は玄関に立ち尽くしていて。

「なーに?迎えに来て欲しかった?」

目の前まで行って手を差し出す。

「ほら、上がって」

じっと手を見ていた織歌。戸惑いながらも重ねられた手に感動。
軽く握り返して彼女を中へ誘(いざな)った。

「お邪魔、します」

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