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ちよこれいと

第1章 ちよこれいと

「ね、オルカの、俺にちょうだい」

……今先輩『オレ』って言った?

少し低めのソフトな声が私の身体の柔らかい所にじんわり響く。

ああ、もう、逃げられない




学校の門を並んで抜ける

ずっと感じる痛い視線。
先輩に憧れる女の子達の嫉妬の目。

私にはそれが苦しくて、上を向いて歩けない。うなだれたまま手を引かれてる。
たくさんの視線にさらされて、まるで、罰ゲーム。

元凶の先輩は、すれ違う友達と気軽に言葉を交わし、とても機嫌は良いみたい。

そうだよね、先輩にとって女の子に見られることは何も特別なことじゃない。
女の子を連れて歩くのも、いつもと同じ。
今日はたまたま私が近くを通っただけ。

私、どうして先輩の手を取ってしまったのだろう……

「―――ルカ!オールカ!」

急にクンッと手を引っ張られて視線をあげた。
学校からは大分離れたらしく、見渡す景色に見覚えがない。目の前には先輩のしかめ面。

形の良い眉がひそめられ、どうも機嫌を損ねたみたい。

「どうしたの?具合悪い?」

……あ、違う
心配、してくれてるんだ

黙って首を横に振る。
女の子の視線が苦しかったなんて、言えない。

「ホントに?大丈夫?」
「大丈夫です」

探るような眼差し。今すぐ視線を外したい。

「……ごめん。迷惑だった?」

繋いだ右手が一瞬弛んで、またギュッと握られる。
数回軽く繰り返されて、まるで存在を確かめられてるみたい。

いいえ、迷惑なんかじゃありません

「でも……チョコくれる、約束したよね?」

ちょっと拗ねたように確認された

意外と先輩こだわりますね。

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