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ちよこれいと

第2章 おまけ

「置いて帰りますから、どうぞ召し上がってください」

わざとらしい程に丁寧な口調。
俺を振り返ろうともしない。

ね、織歌
その怒りは何に対して?

始めに引き留めた時も、チョコを無理やり強請った時も、さっき押し倒した時だってそんなに怒ってなかったよね?

……本当に、もしかする?

織歌が見てるのは久富だと思ってた。だから俺は織歌の記憶に残れれば良いって、あわよくばホワイトデーに約束もって、そんな風に考えてた。

色々調子に乗ってやらかしてしまったけど……
俺が本気で伝えたら、織歌もちゃんと返してくれる?

「ただのチョコじゃ意味がない。織歌のチョコ、織歌からもらいたい」

ねぇ、織歌
俺を見て?
本気なんだって、言わせてよ。

躊躇いを示すようにゆっくりと、織歌が俺を振り返ってくれた。その目に怒りは感じられなくて。
願いを込めて織歌を見上げる。

「さっきは調子に乗ってごめん。織歌がうちにいるのが嬉しくて。何もしないって言ったのに、触りたくて抑えられなかった」

黙ったまま、瞬きをする織歌。

「俺 織歌が好きなんだ」

ピタリとその動きも止め、固まって。

「ね、織歌。チョコ、ちょうだい」

笑い掛けると織歌が大きく目を見開いた。
じっと見詰められて緊張する。

「……あ、は、はい」

!!

また瞬きを繰り返して、織歌がフラりと回れ右をした。
辿々しい歩きで壁際まで戻り、ストンと腰を落とす。そこでまた、動かなくなった。

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