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ちよこれいと

第1章 ちよこれいと

「来てね、うち」

笑顔で覗き込む先輩。

『うち』はマズいんじゃないかしら?
笑ってる先輩の瞳に、背中がゾクゾクするのはどうして?
おへその下がキューンとなるのはどうして?

「行こう」

優しい声。
でも有無を言わさない何か……

また手を引かれ、操られるように足が出る。
ふわふわと、歩いたことはないけれど、雲の上を歩いてるみたい。

コンビニに着いて、言われるがまま、茶色い包みに青いリボンのチョコを買う。

「早く帰ってチョコ食べよ?」

私の指に指を絡めて先輩が笑う。

また、ゾクゾクする。
キューンとなる。

何だか落ち着かなくて視線を外すと先輩がクスクス笑うのが聞こえた。

そっと手を引かれ、歩きだす。
先輩の家に一歩ずつ。


どこを歩いたのか、覚えていない。
見知らぬアパートの扉の前で先輩が止まった。

「今日、お袋夜飲み会。俺一人。うち、上がる?」

まるで日本語に慣れない人みたい。片言の喋り方で私をじっと見つめる。

自分のことを『オレ』と言う。先輩は何を伝えようとしているの?
一人の家、……それはやっぱりダメでしょう?
何で私を誘ったの?

「それとも、ここでチョコくれる?」

小さく首を傾げてニコリと笑う。

「それで、サヨナラ」

え?
サヨナラ?

「どう、しよっか?」

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