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ちよこれいと

第1章 ちよこれいと

サヨナラは、したくない。
もう少し、一緒にいたい。
でも、アノ中には加わりたくない……

「俺はもちろん上がって欲しい。でも、オルカが決めて」
「…………」

強引に連れて来たくせに、何で?
見上げた先輩がニコリと笑って首を傾げる。
ドキドキして視線を落として。

……先輩一人。
それはマズいでしょう?

「オ ル カ」

区切るように名前を呼んで、先輩が覗き込んでくる。
身体の中にジワーッ広がる熱い何か。

「……もう少し、一緒にいたいです」
「うん。俺も一緒にいたい。それは、どっち?上がる?上がらない?」

先輩も一緒にいたいって思ってくれるの?
チョコが欲しいだけじゃなくて?

「…………お邪魔、させてください」

勇気を出した言葉は、蝌の鳴くような小さな声。
それでも先輩はニッコリ笑ってポケットから鍵を取り出した。
シンプルな黒いキーホルダー。

カシャンと音がして鍵が回る。

「どうぞ」

大きく扉を開いて、先輩が声を掛けてくれた。

今まで大人しくしていた心臓が一気にドキドキし始める。

チョコを渡すだけ。
渡してお茶をいただいて、そしたら帰る。
それ、だけ。

立ち止まったままの私に先輩は何も言わない。
扉に寄り掛って待っている。

玄関に、靴ないなぁ……
アンティークっぽい傘立て可愛い。あの傘、この前買うか悩んだ傘だ。サーモンピンクにグレーのパイピング。ちょっと大きめなのに、すごく軽くて……

入るのを躊躇して、全然関係ない所をしげしげと見詰めてしまう。

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