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【特捜】おまつり初詣(前編・後編)

第2章 おまつり初詣(後編)

桐沢さんからの緊迫した無線に耳を傾ける。


『犯人はやはり麻薬をやっていた。今日、この境内で取引が行われる。』


目撃者からの「目つきがうつろ」という情報から、麻薬の線も洗っていたが、一向に犯人の目星がつかなかった通り魔事件。



『浅野はそのまま一般客を引き寄せて、安全確保をしてくれ。店はやめだ。急いで出入り口の見張りと職質を頼む。俺は加賀と麻薬取引現行犯で確保に向かう。』


一斉にみんなの返事が聞こえ、私は急いで桐沢さんの元に戻る。


「桐沢さん!」

「野村が麻薬密売組織を追っていて、通り魔犯に辿りついたらしい。人出が多い、銃は使うな。行くぞ。」

「はい!」


桐沢さんと2人、人をかき分けて境内の裏手へと回る。


「あ、桐沢さんっ!あそこのベンチ……っ!」

「中肉中背の20代くらいの目つきがうつろな男…目撃情報と一致しているな。」


死角になっている位置から、その男を観察する。


『こちら桐沢。裏手で通り魔犯らしき人物を発見。売人が現れ次第、現行犯逮捕する。一般客を巻き込まないように出入り口の強化を頼む。服装は………』


桐沢さんが、無線で出来る限りの情報や指示を皆に出し、私の緊張も高まってくる。


「加賀、売人が来たら一般客の通行人のふりをして近付くぞ。」

「は、はい!」


大勢の一般客で賑わうN神社。
一般客を巻き込むことは避けなければならない。
そして一般客を避難させれば、逮捕はできない。

緊張で手に汗を握りながら、死角の位置から麻薬密売人を待つ。



そのときーーー。


ベンチにもう1人の男が座った。


「行くぞ。」

桐沢さんが、おもむろに私の手を掴んで歩き出す。


「え?え?」

「もっと肩の力を抜け。恋人に見えないじゃねーか。」

「恋人………。」

「俺が指先でカウントしたら、1.2.3で向こう側に回り込め。」


そう言うが早いが、桐沢さんの指が動く。

1...2...3!!!



桐沢さんが通り魔犯に声をかけた瞬間に、私はベンチを挟み込むように向こう側へ回り込む。


彼らが手にしていたものは、やはり麻薬だ。



逃げようとする売人の足を払い、抑えつけ手錠をかけた時には、桐沢さんも既に通り魔犯に手錠をかけていた。


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