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マーメイドな時間

第18章 寿司屋に2

「お客さん、お酒かなんか、お出ししましょうか?」


 いや、親方よ。あれが聴こえる中で柔らかい微笑みで仕事するなよ。


 次第に叫び声が、嗚咽混じりの泣き声に変わってきた。


「ごめんなさい……ごめんなさい……なんでも言うこと聞きます……犬に扱ってもいいから……」


 俺はいまなにを聞いている?


 あれは聞いてはいけないものだろ。


「お客さん、待ってる間、なにか握りましょうか?」


 親方、あんたどういう神経してるんだ?


 そこで、ハマチお願いって言えるかっ!!




『ゴキッ!!』






 …………




 その鈍い音から、声がしなくなった。


 てか、あいつが捌いてるのか?


 耳で感じる見えないシチュエーション、ヤバすぎだろ。


 親方が笑顔であるものを出してくれた。


「これ、人魚の腰から下の皮を湯引きしたもんです。ポン酢でどうぞ」


 いや、タイミング考えろ。


「それとね、今日は裏でカメラさん来てるんですよ」


「えっ? カメラ?」



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