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マーメイドな時間

第25章 野田目幹太と寿司屋の親方

 親方は話を続けた。


「人魚は男性の人魚でした。人魚は私に、海の匂いがすると言ったんだ。まあ、寿司屋ですから、多少、魚の匂いはついていたのでしょう。最初は(男性の)人魚の存在に驚きましたが、話しているうちに、意気投合するようになりました」


「どんな話題を出したのか気になりますねぇ……」


 親方はまたお茶を一口飲んだ。


 だから、それは俺のお茶だと言うのに……。


「私は酒とギャンブルがやめられずに、借金だらけで苦しいと話したら、彼は言いました。『じゃあ、いい仕事を紹介しよう。別に怪しいものではない。我々人魚を当たり前のような存在にするんだ』と」


 意味がわからなかった。そもそも、人魚の言うことが怪しくないわけがない。


 だが、そう思えないほど、追い詰められていたのか。


「その男性の人魚は数少ない生き残り人魚だという。だが、人魚同士の間で出来た子孫は体が弱いのだと言う。強い人魚を残すには人間の男性の精子が必要だと言うのだ」


「ほうほう」


 ヤバい、俺はこの話に食い付いている。



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