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マーメイドな時間

第8章 暴力団に……

「おい、お前、見ない顔やな。名前は?」


 やたらと毛深い男だ。顔の中心部しか肌が見えない。


「平山雪男(ひらやまゆきお)と申します。アダ名はイエティーです」


 イエティーは深々と頭を下げた。


「そこまで聞いてねえよ。いや、安心したよ。この流れだと、そこに滝繁って名前が出る可能性があるからな」


「兄貴、俺になにか?」


「おるんかい」


 俺は深く入りこまないことにした。


 どこにでも出るらしく、相手にするとめんどくさいらしいからな。


 てか、こいつは、いつ入ったんだ?


 あかん、気になったら迷路に迷いこむ。


 存在するだけで、場を掻き回す男っているんだな。


 いずれ、他の作家の作品にも出てくるかも知れねえぞ。用心したほうがいいな。


 おっと、奥の障子が開いた。


 さぁ、組長のおでましや。


 泣く子も笑う……いや、まあ、我々には厳しいけど、子供には優しい面があるから、それでええやろ。


 気性は荒くて、怒らせたらホンマは怖い。


 ほんまはな……。


 組長が入ってきた。


 黒い袴姿が、やや似合ってるわ。


 けど、足らんもんがひとつだけある。


 それは、見た目の貫禄や。


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