けだもの系王子
第7章 聖矢、腹黒系?
身長は高いほうで、スタイルもいいほう。
親のすねをかじって美容院、エステにお金をかけてるし。
「……足長い、綺麗……」
通り過ぎた席の男の二人組が呟く。
ふふん、当たり前っつうのっ。
内心思いつつ、無表情に歩く。
「こちらの席でよろしいでしょうか?」
案内された席は一人二人座れるだけの狭い席。
あたしはその隣の4人座れる席を指差した。
「こっちでもいい?
こっちの席は料理が何品も置けないから困るし」
「……畏まりました。
ではこちらの席へどうぞ?」
メニューを置かれて座ると同時にメニューを広げる。
「お決まりになりましたらお呼び下さい」
そのまま立ち去りそうになるのを呼び止める。
「注文するけどいい?
ミックスサラダ、エビドリア、エビとサーモンのカルパッチョ、チキンステーキ、ライス、野菜スープ、ミックスピザ、トマトと生ハムのスパゲッティー、あとは赤ワイン、適当にスウィーティーな奴1本飲むから。
あと、ケーキいちごのなら何でもいいから」
イケメンは表情を変えずにあたしの注文を繰り返し、ニッコリとした天使の笑顔で、
「お料理は全てすぐにお出ししてもよろしいですか?」
「適当に任すわ」
驚きもせずに去っていく。
ふうん。
大抵どこで食べても驚かれるのに……。
天使のような笑顔は胡散臭い。
あれは営業スマイル。
無関心なんだろう。
このあたしの魅力にもチラリとも見る事もない。
好きな子がいるか、女の子にモテてうんざりしているか、他者と係わりたくないのか。
どれかだろう。
まぁ、そんなあたしもどうでもいい。
誰とも係わりたくない。
昔から姫扱いされ、それなりにモテてるけど、我が儘な性格のせいで最終的に振られる。
今ではもうめんどくさい。
見た目を磨くのはただの自己満足。
なんだかんだ言って綺麗だと言われるのが気持ちいいから。
でも中身はどうもならない。
どうせ誰にも理解されない。
だからめんどくさい。