けだもの系王子
第7章 聖矢、腹黒系?
愛とか恋とか。
映画や少女漫画だけの話で。
実際はもっとどろどろしてるってちゃんと知ってる。
20才、大学生、趣味は食べ歩き?、かな?
さすが雑誌で絶賛されてただけあって、お料理もケーキも美味しい。
さっきのウェイターがほとんどのお料理を運んでくれて、ワインをついでくれる。
名札の名前が『聖矢』とだけ書いてあった。
他のウェイトレスの名札も『真香』とか、どうやらこの店では下の名前を表示するんだろう。
たまにコンビニでも下の名前を表示してるところもあるけど、いいけどね。
聖矢くんはよく動く。
テキパキ動く姿や所作は綺麗な流れるような動き。
手ぶらで歩く事がまずない。
料理を運んで、空いたお皿を下げている。
通りすがりの他のテーブルでも空いた皿を下げている。
時折あたしのテーブルによって、ワインを注いでくれるし。
時折、「聖矢くん、お水ください?」
お客さんに声をかけられている。
他にも従業員はいるのに。
天使のような笑顔で応対、接客している。
疲れるだろうなぁ。
あたしはワインを全て飲み干して、持ち帰りに何品か注文して閉店間際に帰った。
両手が塞がる持ち帰りの荷物。
酔い醒ましのつもりで歩いて駅まで行って電車に乗り込む。
しっかり自分の家の近くの駅で降りたまでは良かったけど、途中の公園のベンチでちょっと休憩と座ってみる。
ああ、気持ちいい風が吹く。
5月のはじめ、軟らかい風があたしの髪を揺らしている。
いい気分だったのに……。
「おねぇさん、一人?」
「なにやってるの?」
見るからに柄が悪そうな二人組。
しまった。
タクシーで帰れば良かった……。
あたしは慌てて立ち上がり荷物を持った。
「家に帰るからお構いなくっ」
言うなりダッシュで走って逃げる……。
つもりだったのに、金髪頭の男があたしの肩をがっちり掴む。
「俺らが送ろうか?」
「可愛いいじゃん?」