けだもの系王子
第7章 聖矢、腹黒系?
口では優し気な事を言ってるけど、あたしの肩を掴む力は強くて不愉快な気分にさせる。
あたしは舌打ちをした。
くそっ、荷物が、明日の朝ご飯が両手を塞いでる。
「お構い無くっ……!」
言うなり、回し蹴りをかまし、金髪男の腹を振り向きざまに狙った。
ドスッ!
鈍い音と、足に不愉快な感触。
「いってぇ〜!
なんだこいつ!」
少し離れた場所にいたもう一人の茶髪があたしに近寄る。
走り出しながら姿勢を低くして、そいつの腕から逃れる。
「この女〜!
逃がすなっ!」
背後で聞こえる喚き声。
逃げるあたしの前に立ち塞がる新たな男が表れて、舌打ちをしながら、右足で蹴りを放とうと足を上げた。
ビュッという風の切るような音。
「ちょっと待って!
僕は違うからっ、こっち、こっちっ!」
良く見たら、さっきのウェイター!?
聖矢はあたしの蹴りを難なくかわして、あたしの腕を掴む。
「はあ!?
なんであんたがここに!?」
すぐ傍に車が停めてあった。
「乗ってっ!」
ピピッ
車のキーが開く音。
急いで助手席に乗り込み、聖矢も運転席に乗ってすぐに車は動き出した。
振り返ると金髪、茶髪の二人組からどんどん離れて行く。
その姿を見て、ほっと胸を撫で下ろす。
「いやぁ、今どきああいう人達ってまだいるんだ?
びっくりした〜」
言いながら笑ってしまう。
「助けてくれてありがとう。
あたし、立花 麗奈。
あんたはさっきのウェイターだよね?」
「笑い事じゃないでしょう?
あの二人は店に来ていたお客さんだよ?
君、つけられていたんだよ?」
「えっ、そうなの?
気付かなかった〜、あんたは何であの場所にいたの?
間違って蹴りそうになったじゃない、大丈夫だった?」
「大丈夫だけどっ。
君、呑気だね?」
「だってあたし、強いし、荷物があったから手間取ったけど、身軽だったらあれくらいどうにでもなったし」
聖矢は黙ってあたしに何かを渡した。
良く見たらあたしの学生証。
「僕と同じ大学なんだね?
1つ年上で先輩だ。
レジでこんな大事な物を落とすなんて」