けだもの系王子
第7章 聖矢、腹黒系?
ピンポーン。
家のマンションのインターホンが鳴る。
インターホンの受話器をはずすと画面に聖矢の姿が写る。
おかしい。
このマンションはこんなに簡単に人が入れない筈なのに。
玄関のドアを開けた瞬間、
「麗奈さんっ」
いきなり抱きしめられる。
あたしに頬擦りして耳元にキスをされる。
その姿はまるで尻尾を振るわんこ。
あたしは冷静に聖矢をべりっと引き離し、キッチンへと先に歩く。
「はいはい、お腹空いたからパスタ作って?」
あたしのエプロンを着せてあげる。
冷蔵庫からワインを1本取りだしてコルクを開ける。
その隣で冷蔵庫の中を見ている聖矢が溜め息をつく。
「無駄に魚介類が多いけど麗奈さん買い過ぎだってば。
ん〜シーフードのクリームスパかな?」
「それだけ?」
「シーフードのカルパッチョ、野菜サラダ、生ハム……だからなま物多いいよ?
ワインのつまみのつもり?
あっ、また、高いチーズ買ってるっ!」
あたしはチーズを取りだして封を開ける、ワイングラスに赤ワインを注ぎそのままチーズを丸かじりする。
「うまいっ!」
レタスをちぎって洗って手早く生ハムを盛り付ける。
「えっ?
もう前菜始まっちゃう?
早いよ麗奈さんっ」
慌ててパスタを茹で始める聖矢。
すでにあたしはカウンターキッチンに座ってワインを飲みはじめているし。
そのあたしの為に何品かお料理を作って出してくれる。
あたし達の間には何の約束もない。
大学の授業を受けて家に帰る。
夕方にお腹が空いたらご飯を食べに行く。
だいたいそのタイミングで聖矢に捕まってバイト先の店に連れて行かれるのが彼がバイトの日。
バイトがない日は直接家のマンションに来るようになって冷蔵庫の掃除をしてくれる。
あたしだって人並に料理は作れる。
殆どがワインのつまみではあるけど。
丸かじりしていたチーズを取られて薄くスライスしてくれる。
「食べたら一緒なのに、無駄な手間じゃねぇ?」