テキストサイズ

けだもの系王子

第8章 涼、蓮、意地悪系?








涼先輩と初めて会ったのは。





映画館の中だった。





その日、あたしは彼氏にすっぽかされた。





約束していたデートの待ち合わせに。





『もうお前とは会わない、別れよう……』





あっさり電話で別れ話。





そんな予感はしたけど。





電話で別れ話とかひどくない?





映画のチケットは2枚手元にあって。




呆然として、チケットを買おうとしていた人に適当に声をかけた。




「1枚いらないんであげます、良かったらどうぞ?」





「えっ?
いいのっ?」




チケットを見つめて嬉しそうに笑っている。





それが涼先輩だった。





チケットを渡したあたしはふらりと映画館に入って。





当然その人も一緒に映画館に入る。





席も隣同士で。




だけどそれどころじゃなくて。




映画どころじゃない気分で呆然としていた。





映画の内容も覚えてなくて。





ただ、静かに涙を流していた。





隣に座った人は何も言わずに黙って映画を見ていた。





それが初めて会ったとき。





その後はバイト先で出会った。





あたしは覚えてたけど。





涼先輩は覚えてなかったみたいだった。





涼先輩は同じ大学で大学院生。





頭が良くて優秀でいろいろな研究をしているみたい。




それなのに、バイトにもちゃんと来ている。





優しくて紳士的で。





一緒に過ごしているうちに。





恋をするのにそんなに時間はかからなかった……。














ストーリーメニュー

TOPTOPへ