けだもの系王子
第8章 涼、蓮、意地悪系?
コンコンっ!
少し乱暴なドアをノックする音が聞こえる。
ゆっくりと目を開ける。
あたしは裸のままで。
隣には涼先輩がベッドの上にいて。
ちっと舌打ちしながら身を起こしてドアを少しだけ開けている。
「蓮っ、帰ってたのか?
俺の部屋に由宇がいた筈なんだけど知らないか?
靴もないみたいだし……」
「知らねぇよ?
何だ涼、逃げられたの、だせぇな」
「馬鹿だな俺は、つい買い物し過ぎた。舞い上がってたんだろうな」
呆然として二人の会話を聞く。
ドアを開けた人の姿が見えた。
涼先輩の体があるから向こうからはあたしの姿が見えないみたいだけど。
あたしにははっきり見えた……。
端整な顔立ち涼しげな目元。
あたしの大好きな、笑顔……!
「蓮、お前こそ合コンはどうしたんだ?」
「いい女がいなかったから帰ったんだよ。
飲んだから、俺もう寝るから、入ってくるなよ?」
「ああ、悪かったな」
蓮、と呼ばれていた人がドアを閉めた。
バタン。
ゆっくりと振り返る。
あたしと目が合うとニヤリと笑った。
「何だ、起きたの?」
意地悪な笑いかた。
顔立ちは涼先輩そのもので。
髪型や背格好までそっくりだけど。
「あなたはっ、誰なのっ……?」
傍に転がっていたバスタオルを引き寄せて体を隠す。
「あいつの双子の弟で蓮っていうの。
それよりも、何で体隠すんだよ、今更だろ?」
ゆっくりとベッドの上に上がって来てあたしに近付く。
後ずさりしながら意地悪な瞳を睨みつける。
「涼先輩じゃないのなら、あたし……!」
「なに馬鹿な事言ってんだよ、あんなに感じまくってた癖に」
蓮の手があたしのバスタオルをあっさりどかした。
「どうしてこんな事っ、涼せんぱ……っ!」
叫ぼうとする口を手で覆われる。
「あいつを呼んでどうすんだ?
こんな状況見られてもいいんだ?
……それとも、俺にやられてる姿を見せたい?」