けだもの系王子
第2章 聖矢 、子犬系?
「聖ちゃん?」
屋上のドアを無言で開けている。
キイッ。
重い音がやけに響いた。
いつも一緒に弁当を食べている屋上に、足を踏み入れる。
今日は少し肌寒いからか他に人がいない。
バタン。
ドアの閉まる音。
カチャリ。
鍵を閉める音。
どうして鍵を?
いつも座るベンチに腰掛ける。
戸惑いながら、隣に座る。
「妹みたいって、なんなの?」
明らかに苛ついた瞳が、あたしを責めるように見据える。
「今までこの外見のせいで、苛められる事はあったけど、好きな子に妹みたいって言われるのって、最悪だと思わない?」
聖ちゃんの手が、あたしの頬に触れる。
「異性として全く意識されてないって事だよね?」
ゆっくり聖ちゃんの顔があたしに近付く。
至近距離で見つめられ、息をのむ。
「だって、聖ちゃんは……」
「生まれた時から、キョウダイみたいに過ごしたから?」
何も言えない。
だって、その通りだから。
「でも、僕は違うよ。ずっと好きで、欲しくて欲しくて、限界だった。僕が男の子だって、証明してあげるよ?」
どういう意味?
聖ちゃんの瞳がきらりと艶めく。
突然、視界が暗くなる。
聖ちゃんの体があたしに覆いかぶさるように抱きしめられ、唐突に唇が重なった。
「んんんっ……!」
激しく唇を押し付けられる。
苦しくて唇を開くと、そこから聖ちゃんの舌があたしの口内に入ってきた。
「んぁっ……なに……あっ……」
はじめてのキスに戸惑う。
聖ちゃんの体があたしを押さえつける。
口の中で聖ちゃんの舌が蠢く。
あたしの舌を執拗に追いかける。
「んんっ!……やっ!……!」
痺れるような感覚。
甘い声を洩らしてしまってる。
あたしの声?
こんなの、嫌なのに。