けだもの系王子
第2章 聖矢 、子犬系?
一緒に帰りたくない。
朝一緒に登校して、一緒に帰らなくちゃいけない。
自転車を二人乗りして来たから、一人で帰る事は出来ない。
「さき、昼休みから、元気ないけど、なんかあった?」
自転車置き場まで、なおちゃんがついて来る。
「うん、聖ちゃんと、喧嘩しちゃって……、聖ちゃんが恐くなっちゃった……」
あたしは俯いて、それだけ伝えた。
恐くなっちゃった……。
それが正直な気持ち。
「う〜ん、聖ちゃんて昔から恐いところあるからね?さきの前では甘えてばかりだったけど、さきに近寄る男の子を牽制したり、結構したたかよ?」
「はあっ?」
あたしはびっくりしてなおちゃんの顔を見つめる。
「聖ちゃんは良く苛められてたけど、さきがそのせいでけがした時は、すごい剣幕で怒って椅子を振り回したりした事もあるからね?ああいうタイプはキレたら恐いよ?」
「そんな事があったっけ?」
「小学校の時にあんたが保健室に運ばれたでしょ?あの後の事よ?」
「信じらんない……」
「小学校の時の苛めはあれでなくなったよね?中学校では学校行かずに空手習いに行ってたみたいだし……」
「ちょっと待って、そんなの、知らないよ?」
「さきには内緒にしたかったみたいよ?まぁ、厄介なのに好かれたと思って諦めるしかないよね?」
「あたし、斎藤先輩のことが、好きかもしれないのに……」
「難しいかもね?そんだけ好かれちゃあね?」
「そんなぁ、人事だと思ってえ」
「あっ、聖ちゃん来たみたいよ?じゃあね?」
なおちゃんが手を振って去って行く。
聖ちゃんの姿が見えた。
思わず、身構えてしまう、あたし……。
固い表情で聖ちゃんの顔を見つめる。
そんなあたしの前で、ふわりと笑う。
花のような、天使の微笑み。
んんっ?
「さきちゃんっ」
ぎゅっと、抱き付いて来る。
……えっ?