けだもの系王子
第2章 聖矢 、子犬系?
なんとなく、強ばったままのあたし。
いつもの癖でびくつきながらも、背中をなでなでしてあげる。
「今日はちょっと寒いから、早く帰ろうよ?晩御飯はあったかいものが食べたいな?」
いつも通りの様子に面食らってしまう。
「うん、そうだね」
家に帰ってしまえば、お母さんもいるし。
そうだ、さっさと帰ってしまおう。
そう思ったあたしは聖ちゃんに急かされるように、自転車を走らせて、二人乗りして家に帰った。
いつも通りの聖ちゃんに安心して、家の前で、普通に別れた。
だから。
すっかり、油断していたんだ。
家に帰って部屋着に着替えてから、自分の部屋のベッドにどっと倒れ込む。
それから、斎藤先輩に告白された事を思い出す。
斎藤先輩。
風紀委員でいつも校門の前で、制服や髪型のチェックをしている。
素敵な人で女子からも人気があって、わざと目立つ格好して気を引いてる人も多い。
あたしは主に自転車の注意を受けていた。
そもそも二人乗りしてはいけないらしい。
聖ちゃんがぼぅっとして、落ちそうになっていた事もあったし。
ほとんど、聖ちゃんのせいだけど。
優しく注意されるのが、妙に嬉しかったりして。
そんな人に告白されるなんて。
嬉しい。
どうしよう。
考え事をしていたら、いつの間にか、そのまま、うとうとしていた。
ちゅっと、音が鳴り響く。
あたしの耳にダイレクトに鳴り響く。
耳の中で何かが蠢く。
ゾワリとした、快感。
「んんっ!……?」
思わず肩をすくめる。
目を開けると、あたしの真上に、聖ちゃんがいた。
「なっ!何してるのっ?」
びっくりして、聖ちゃんの胸を押し退けようとする。
びくともしない。
あたしのベッドの上に、覆いかぶさっている。
「何って、夜這い?でもまだ帰ってそんなに時間たってないからね?まだ夕方だよ?」