けだもの系王子
第9章 椿、真面目ぼっちゃん系?
椿side
「毎日外食とかやっぱりおぼっちゃまはいいよなあ」
和真が羨ましそうにぼやいてパスタを口にいれた。
「まあな」
「まあな、とかそんなさらりと……神様は不公平だよな、ま、お陰で旨いランチを奢ってもらうんだけどなあ?」
「ちいちゃんなんか歩き方変じゃないか?」
「……お前ずっとそっち見てただろう?ってか俺の話も聞いてねえ?」
「怪我でもしたんだろうか?まともに歩けてないじゃないか?」
「もしもし?椿っ?」
ちいちゃんに会いたかったから、昨日と同じように和真を誘って、イタリアンの店に入った。
ちいちゃんの様子がおかしい事にすぐに気付く。
歩き方がおかしいし、ふらついてるようにも見える。
それに顔色が悪い、蒼白くて儚げな色気を醸し出しているけど見てられない。
俺はじっとする事が出来ずに席を立つ。
お客さんが帰った後の席を片付けているちいちゃんの腕を掴む。
「なっ?また、椿さんっ?」
「顔色が悪い、すぐに家に送るよ?」
「やっ、そんなちょっと、困りますっ……!」
嫌がって抵抗する力が弱い。
風邪か女の子だから貧血か、どちらにしても働くどころじゃないだろう。
ケータイを取り出して実家に電話する。
「ああ、椿だ。
ウェイトレスの経験者を一人派遣してくれ、若くて可愛いほうがいいだろう、俺が良く行くイタリアンの店だ。
それから車を一台至急で回せ、女の子を一人病院に連れて行く、よろしく頼む」
一方的に用件を伝えて、呆然としている周囲の人に頭を下げる。
「そういうことで、ちいちゃんは俺に任せてくれ?」
ちいちゃんの腕を取って小さな手を繋ぐ。
本当はお姫様抱っこをしたいけど、流石にそれは我慢して、店長に説明して店を出た。