テキストサイズ

けだもの系王子

第9章 椿、真面目ぼっちゃん系?




椿さんの大きな手を握って、この手に甘えたいと思う。



この手について行きたい。



ふらりとした足取りで付いていく。



広い背中。



綺麗な後頭部。



椿さんの姿が何故だか輝いて見える。



あたしの目がおかしいのだろうか?



これがイケメンオーラっていうやつなんだろうか?



椿さんは綺麗だ。



彼を取り巻く空気もなんだか綺麗で清涼な気がする。



眩しくて目を細めて、自分がひどく、汚ないように感じた。



訳の分からない罪悪感。



こんな自分は恥ずかしい。



光の中を颯爽と歩く彼に付いて行ってもいいのだろうか?




準備して店の外で高級車が止まっていて、椿さんと一緒に後ろのシートに乗り込む。



広い車内。



椿さんとくっついて座り、自然な動作であたしの体を自分の体に凭れさせてくれる。



「きついなら俺に体重預けても平気だからね?寝ててもいいよ?」



椿さんの優しい手があたしの肩を抱き寄せる。



こつん。



椿さんの肩に頭を乗せて、ゆっくり目を閉じる。



たぶん、ただの睡眠不足だ。



昨日バイトから帰って、あんな事があって……。



いつの間にか意識を失っていたけど、あれは、あの時の時間は、とてつもなく、長く感じたから。



朝、目が覚めても、体に残る、異物感。



あたしのあそこの中に、まだ、真人兄ちゃんのモノがはいっているような、そんな気がした。



ぎゅっと目を閉じて椿さんの体に、自分の体を寄せる。



そうしてないと不安だった。




忘れたい。




真人兄ちゃんの感触を。




忘れさせて欲しい。




この暖かい体温を、あたしの体に刻みつけて、全てを塗り替えて欲しい。



他の誰でもなく。



椿さんがいい。



椿さんなら良かったのに……。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ