けだもの系王子
第9章 椿、真面目ぼっちゃん系?
「……!お前……!椿……!」
二人は知り合いなの?
「久し振りだな?同じ大学なのに、ほとんど会えないじゃないか?」
「そりゃあ、院生と一緒にされても困るし、椿先輩こそ、忙しいんだろ?」
「まあね、ところでちいちゃんと君の関係を、そろそろ教えて欲しいんだけどな?」
椿先輩の表情が笑顔なんだけど、何となく穏やかじゃないような気がする。
「こいつ、俺の妹だよ、たった一人の兄妹だから、心配で迎えに来たんだ」
「やっぱりそうか……、お前、昔から俺に言ってたもんな、可愛い妹がいるって、血が繋がってないけど、大事なんだって」
「よくそんな昔言ってた事まで覚えてるな?」
「記憶力が良すぎて困ってるんだけど真人、残念だが、ちいちゃんはお前に渡せないよ?」
「は?何言ってんの?俺はこいつを迎えに来たんだけど?」
「……自分が昨日ちいちゃんに何をしたか、分かってるのか?
この病院で検査して証拠もあるんだよ、おおごとにして法的手段に訴えて彼女を保護する事も出来る。
だけどお前も一応友達だし、彼女を傷付けたくないから穏便に済ませる。
取り敢えず俺の前から消えろ、真人、この意味が分かるか?」
どうして?
椿さんが……知っているの?
その事がショックだった。
色んな感情があたしの中で吹き荒れる。
椿さんはお兄ちゃんと同じ大学で友達同士で、あたしの話をした事もあって……。
「何でそんな事が……お前に分かるんだよっ……!」
「俺は昨日ちいちゃんを家まで送ったんだ。翌日お店に来てみたら明らかにちいちゃんの様子がおかしくて、色々検査を受けて、今、お前と話をして思い出したんだ。血が繋がってない妹がいるって、お前が昔言っていたんだよ。
昨日俺がちいちゃんを家まで送って、その後、お前は何をした?
言えるものなら言ってみろよ?」
真っ直ぐな椿さんの瞳が鋭く真人兄ちゃんを見据える。
透き通った綺麗な瞳が、責めるように輝いて、ドキドキしながら、どうする事も出来ずに、ただ見惚れるように見つめる。
椿さん、椿さん……。
真人兄ちゃんが驚いたように目を見開いて、大きく息をついた。