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けだもの系王子

第10章 涼、束縛系?





やることは沢山ある。



気持ちが急いて、ベンチから立ち上がる。



また、立ち眩み。



アスファルトがグニャリと曲がる感覚がして、その場でしゃがみこむ。



キーンという耳鳴りがして。



倒れる……。



覚悟をして、ぎゅっと目を閉じるあたしの体を、優しい腕がさっと支えてくれた。



ああ……。



誰……?



優しい腕の中で、安心して意識を失う。



暖かい腕。



この腕は安心できる……。



優しく抱き上げられて、体がふわりとした感覚。



暖かい胸に頬を寄せる。



ああ……。



あたし夢を見ているのかな。



王子様にお姫様抱っこされて、夢みたい。



誰……?



あなたは……。






目が覚めたら見知らぬ天井が目に入る。




キングサイズのベッドで寝ているあたし。



上質のシーツの感触に驚いてベッドの下に降りて。



高級マンションの一室にいて、窓の外には高層ビルが建ち並ぶ。



眼下に広がる街のネオン。



ここはどこっ?



ベッドから降りて軽くパニックになるあたしの背後で、聞き覚えのある声が聞こえた。



「目が覚めたのかい、唯夏ちゃん?街中で倒れていたから驚いたよ?」



清潔感のある白いシャツに黒いズボン。



涼先輩がベッドの傍にいるあたしに近付く。



「涼先輩……?あたし……?」




「とっさに君を抱えて俺の家が近いから、思わず連れて来てしまったけど、悪かったね?具合はどうかな?」



外が暗いから結構長い時間寝てしまっていたんだろう。



不思議と体はスッキリしていた。




「お陰様で元気になりましたっ、すいませんっ、涼先輩に迷惑かけてっ」



「君は頑張り屋だからね、あんまり無理をしたらダメだよ?」



「もう大丈夫ですっ、じゃあ、あたしっ、そろそろ失礼しますねっ」



ベッドから降りて、帰る支度をしようと思ったのに。



涼先輩にトンっ、優しくベッドに押し戻された。



ふわりとあっさり、ベッドに転がるあたしの体の上に涼先輩が覆い被さる。



「まだ、体に力が入らないみたいだね?もう少し休んでいったらいいよ」

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