けだもの系王子
第10章 涼、束縛系?
樹店長side
「おいっ、もしもし?唯夏っ?」
ケータイを握りしめて、呼び掛けるのに、唐突に通話が切られる。
あいつ、そんなに体調悪いのか?
「なあなあ、店長?早くシーフードパスタ作れよ?ちょっと遅くねぇか?常連のお嬢が待ってるから早くしろよ?」
バイトのウェイターの慶紀が、なあなあ、うるせえ。
「うるさい、お嬢には聖矢に行かせてワインでも飲ませとけ」
「はあ?何言ってんだよ店長、仕事しろよ、……女かよ、なあなあ?」
確かに昨日顔色が悪くて、ふらふらしていたし。
昨日あの時俺が、しっかり家に連れて帰ってやれば良かったな。
あいつ、どこぞで、野垂れ死んじゃあないよな。
そう言えば新作スウィーツを食わす約束していたし、いや、具合が悪いと食べれないか?
ちょっと家に様子を見に行ってみるか?
「なあなあ、店長、シカトするなよ?おい、マナカ、店長が仕事サボってんだよ、何か言ってやれよ、オーナーに言い付けるぞって」
美人の彼女であるウェイトレスに助けを求めている。
可愛い彼女はにっこり微笑む。
「今、暇だから、パパと交代して休憩しますか、店長?」
流石、オーナーの娘。
回りを良く見ている。
それに比べて馬鹿なこの彼氏。
「……唯夏ちゃんの事が心配ですよね?一人暮らしだし、店長様子見に行ってあげたらどうです?」
「いや、流石にそれはまずいだろ?」
「あら、新作ケーキ持って行くんでしょ?女の子はスウィーツ食べたら元気になるもんですよ?」
「それはマナカだけだろ?唯夏さんのような大人の女性と一緒にするなよなあ?」
笑う慶紀を長い足で蹴り上げる彼女。
どうでもいいけどここは神聖なキッチン。
食器を片付けたならウェイター、ウェイトレスどもはさっさと退出しろ。
イライラしながらシーフードパスタを作る。
電話での唯夏の様子。
明らかにおかしかった。
それに最後のほうの唯夏の声。
くぐもったような、声。
嫌な予感がする。
胸騒ぎ?