けだもの系王子
第10章 涼、束縛系?
シーフードパスタを作ったら、オーナーに相談して、様子を見に行ってみるか?
ケーキを食わす約束していたし、別におかしな事じゃない。
家に行く言い訳や理由を考える自分に苦笑してしまう。
まいったな。
ここのウェイトレスに惚れてしまうとか、ヤバイだろ?
有り得ない。
それだけはダメだと、自分に言い聞かせて来たのに。
唯夏ちゃんは特別な存在になってしまっていた。
初めて会ったのは唯夏ちゃんが高校生の時。
オーナーの趣味なのか、ここのウェイトレス、ウェイターは美形が多い。
雑誌でも取りあげられる程の、評判のイタリアンの店。
スウィーツも豊富だし、ウェイター、ウェイトレス狙いの客も多く、店内はほぼ満席。
オーナーとは親戚で本場のイタリアで修行して、この店に入社することになって。
身内だからか、いきなり店長。
忙しくていっぱいいっぱいの毎日だった。
唯夏ちゃんは俺が入社する前から働いていた。
頑張り屋。
でも、働き過ぎじゃないか?
身を削るようにして働く女の子、まだ、高校生なのに。
じっと見ていて、すぐに気付いた。
わざわざ自分がやらなくても、近くにいる奴にやらせばいいのに、そこまでするか?
事故犠牲、嫌、そうじゃない。
他人が信用出来ないんだ。
他人に任せられない。
甘えない。
人に頼まない。
全てにおいて自分がやる。
その癖、人の仕事は率先してやる。
高校生の女の子なのに。
聞けば彼女は子供の時に、病気で両親を亡くして、親戚の家に世話になって、高校生からは一人暮らしをしているようだった。
肩の力を抜けとか、無理するなとか、声をかけると、決まって首を傾げる。
何がですか?
何のことか分からないみたいだった。
そんな唯夏ちゃんを見て、守ってあげたい、幸せにしてあげたい。
そう思うようになってしまっていた。