けだもの系王子
第10章 涼、束縛系?
目を覚ますと、見慣れた家の天井があった。
ゆっくりと体を起こして、首を傾げる。
「唯夏っ、大丈夫かっ?」
あたしのベッドの傍に、何故だか樹店長がいた。
心配そうに身を乗り出して、あたしの顔を覗き込む。
相変わらずの渋い顔立ちの美形に、至近距離で見つめられて戸惑う。
「あたし、どうして家に……?涼……の家に確か……いたはずだったよね……?」
自分自身に確認するように呟く。
……そうだ。
街の真ん中で気を失ってるのを、涼に助けられて、そのまま泊まって。
翌日にバイトに行こうとしたのに、鍵が掛けられて、涼に帰してもらえなくて。
手を縛られて、ベッドに拘束されて。
薬を……飲まされた。
そこまで考えてゾクリとする。
あの薬は何?
それからの記憶がない……?
「君があいつに何をされたか分からないし、知りたくもないけど、あんな奴の事はもう忘れろ!」
樹店長にぎゅっと抱きしめられる。
逞しい胸の中できつく抱きしめられて戸惑う。
「樹、店長……?どうして店長が?」
「街中で気を失ってる君を抱える涼を、聖子ちゃんが見たって聞いて、電話の様子もおかしかったから気になって、涼の家に俺が君を迎えに行ったんだ」
「そうなんですか……店長が……」
「唯夏、あいつにはもう近付くな、あいつはどこかおかしい、俺が君を守るから、あいつの事は忘れるんだ!」
忘れる?
あたしが涼の事を……?
あんなにも深く繋がり合った存在を、忘れる事なんて出来るのだろうか?
「唯夏、好きだ!俺に唯夏を、守らせてくれ……!」
抱きしめられて、熱く呟かれる。
呆然とした気持ちのまま、店長の言葉を聞いていた……。