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けだもの系王子

第10章 涼、束縛系?






「唯夏ちゃん、これ持って行ってくれ」




厨房のカウンターに出来上がった料理を置いて、樹店長に声をかけられる。




「はぁい、持っていきます」




返事をして料理を受け取ろうとして、お皿を持っている店長の手に、あたしの手が触れた。



「あ……」



ピクリと反応してしまう。




スルリと手をどける店長と、カウンター越しに目が合ってしまう。



その瞳が以前より優しく、甘い気がして、ドキドキした。



黙って料理を運ぶ。



「なあ、唯夏、顔赤いぞ〜」



ウェイターの慶紀くんにからかわれる。




「うるさい〜」




誤魔化すように笑った。






あれから1週間が過ぎて、あたしはいつも通りの日常を取り戻していた。



涼……とはあれから会っていない。



もともと連絡先も知らない。



あの日あの街中で出会ったのも偶然だったし。



涼の家は知っているけど。



それだけだ。



あのマンションはバイト先からも近いし。



あたしの家からも近い。



会おうと思えばいつでも……会える。



いつでも会えるのに。



……会うのが恐いんだ。





涼は何故あたしを監禁したの?



あたしの両手を拘束して、薬を飲まして……。




あの薬は何?



どうしてそんな事をしたの?




涼はあたしの事をどう思っているの……?




聞きたい事は沢山あるのに、聞けない。




会うのが恐い。



会いたいのに、会いたくない……。


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