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けだもの系王子

第10章 涼、束縛系?





「いらっしゃいませ、こんにちは、何名様でしょうか?」



相変わらず、夏休みだしで忙しい。




擦れ違うウェイトレスも皆、早足で歩く。




キッチンでは店長がピリピリ厳しい顔で、料理を作っている。



店長の横顔を見ながら思う。



樹店長にちゃんと言わなきゃ。



やっぱりあたしは、涼が好きですって。



店長とは付き合えませんって。



言わなきゃいけない。




「唯夏さん、ご機嫌だなあ?」




ウェイターの慶紀くんが声をかけていく。




「えっ、忙しいのに、そんな事ないよ?」




「いかにも、やってきたような顔してるもん、それに昨日と同じ服だったし……」




そこまで言う慶紀くんの口を慌てて押さえる。




天然で空気が読めないこの子、ませた高校生。




チラリと見ると、店長と目が合って、びくんとする。



慶紀くんの彼女が通り過ぎざまに、彼の足を蹴って行く。



「なんだよ、マナカっ」




「変な事いわないのっ、バカっ」



「なんだよ、ひょっとしてヤキモチか?なあなあ?」



ニヤニヤ笑いながら、マナカちゃんの後を付いていく。



忙しいピークは終わった様子だ。



ケーキの箱がきれかけてたから、在庫を取りに倉庫に行く事を伝える。



大きな洋館のような造りで、地下室が倉庫になっている。



駐車場を通って、地下室の階段を下りる。



薄暗い倉庫で電気をつけた。




ケーキの箱の段ボールのような香り。




色んなサイズの箱が並んでいて、必要なサイズを取ろうとした。



ドサドサッ。



雪崩のように他の箱が崩れて、足場の段ボールにつまずいて、あたしの体の上にケーキの箱が落ちてきた。



軽く悲鳴をあげる。



「唯夏っ!大丈夫かっ!」



樹店長の声が聞こえた。



「大丈夫で〜す」



ケーキの箱に埋まった状態で、箱をどけながら返事をする。



「ったく、誰がこんなとこに段ボール置いたんだ!?業者に言っとかないとな?」



ガサガサ、段ボールの上に仰向けに転んだあたし。



店長があたしの体にある箱をどけながら呟く。

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