けだもの系王子
第10章 涼、束縛系?
あたしの胸元にある箱をどけて、樹店長の動きがピタリと止まる。
「……唯夏、あいつと、涼と、会ったのか?」
「……え?……あっ、そうなんです、あたし、やっぱり涼の事が好きなんです、ごめんなさいっ」
言うなら今だと思って言ったのに、あたしの口が塞がった。
樹店長の唇によって。
「んんっ、ちょっ、店長っ……!」
店長の唇から逃れて顔を背ける。
店長の舌があたしの首筋を這って、胸元につつっと下りていく。
メイドのコスプレのような制服。
胸元が大きく開いて、リボンがついている。
店長の口があたしの胸元に寄せられて、胸元のリボンを噛んで広げる。
艶やかな強引な仕草に悲鳴をあげる。
「店長っ?やあっ、そんな事っ、店長らしくもないっ」
店長の唇があたしの胸元に寄せられて、あたしのブラジャーを噛んでずらしている。
あたしの体に店長の体が覆い被さって、重みで身動き出来ない。
「俺らしくないって?いつもこんな格好を見せられて、涼の家に行った時はお前は裸だったんだぞ!お前のそんな姿を見て、俺が何も感じないとでも?」
胸元に唇を寄せる店長の動きが一瞬止まる。
あたしの両手を掴んで押さえつけている店長が、ぐっと胸元に唇を寄せる。
ちゅうっ、ちゅうっ。
吸い付くようにキスをされて、チクりとした痛みに声をあげる。
「やぁっ、何を……っ」
思わず店長の体を突き飛ばす。
ハッとしたように店長の体が離れた。
恐くて知らずに涙が零れて、店長の野性的な顔が、スッと冷静な表情になる。
「悪い……!唯夏……!」
優しく体を起こされて、乱れた服が整えられる。
「お前があいつを好きでも俺は反対だ、俺はあの時のお前の状態を見ているんだ、お前を大事に出来ない男の所にお前を行かせたくないんだ」
店長の言う事は分かっている。
自分でも分かっている。
涼は危険だと。
それでも、好きだから。
自分の気持ちが止められない。
涼が好き。
ごめんなさい、樹店長。