けだもの系王子
第11章 零斗、チャラ男系?
『あっ、こっちの席にどうぞっ』
零斗さんの友達に話かけている。
テーブルに肘を付けて、あたしの顔を覗き込んで、零斗さんが口を開いた。
「葉月ちゃんさ、俺のセフレにならない?」
にっこり笑顔で、まるでちょっと買い物行かない?的な軽い口調に内心パニックになる。
「いえっ、その、間に合ってますから」
「俺の方が上手いと思うけど?」
『きゃ〜』回りの友達が騒がしい。
皆の視線を感じてしまう。
「上手いとかそういうの関係ないと思うんで」
「へえ?……好きだな、そういうの」
じっと見つめられる。
心の奥まで見透かされそうで、緊張してしまう。
「やっぱり、欲しいね、葉月ちゃん」
「……からかわないで下さい」
うどんを食べる。
緊張して味が分からない。
いつの間にか、零斗さんは定食を食べ終わっていた。
回りが騒がしいけど、緊張して耳に入らない。
早くどこかに行って欲しい。
間が持たない。
それなのに、じっと見つめられる。
嫌だ、そんな目で見ないで。
「天かす……」
ぽつりと呟く零斗さんが、スッとあたしの方に近付く。
息を飲むあたしの頬に、唇を寄せた。
「……なっ」
『きゃ〜〜』
周囲の声があがった。
唇に暖かい感触、舌まで這わされて、
「天かす、ついてた」
にっこり笑顔で唇を舐める。
呆然として固まるあたしを残して、笑いながら、去って行く。
「ご馳走様、また、バイトでね?」
意味ありげな視線だった。
「それでは皆、それぞれ、飲み物を持ったかな?……カンパイッ!」
樹店長が生ビールのジョッキを掲げて、高らかに宣言する。
「カンパイ〜!!」
バイトの男女、ほぼ総出でグラスが重なる。
あたしは未成年で、表向きはジュースだけど、このテンションに頑張って付き合う為に、こっそり水の振りして、芋焼酎をのんだ。
今日は歓迎会の為に営業は18時までにして、バイトの子、社員の人、総出で飲み放題、食べ放題だ。