けだもの系王子
第12章 朔矢、ストーカー系
「良く言うわよ、彼以外はもう起たない癖に」
「失礼なこと言うなよ?
俺は昔も今も絶倫だっての」
笑いながらビールを飲んで
あたしのケータイから
ラインの着信音が響く。
ブランドの鞄から
ケータイを取り出す。
液晶画面には
『朔矢といいます。
友達から麗香さんの話を聞いて、
出来ればお願いしたいですけど、どうですか?』
添付された写真も必ず
送って貰う。
写真を見て
一言呟いた。
「……わぁお、イケメン」
お洒落なサラサラそうな黒髪
少し前髪が長めに残してて
その隙間から覗く
真っ直ぐな黒い瞳。
綺麗な瞳。
直ぐ様返事を打つ。
「大丈夫だよ?よろしくね?」
『今からは、無理でしょうか?』
「いいけど、今飲みに出てて……」
ラインのメッセージを
打ちながら席を立つ。
勇に目配せすると
伝票を計算している。
財布を持ち
高いイスから下りた。
店内の客の視線が
あたしに集まる。
ハデな外見
やらしい体つき。
普通の恋愛なんて
出来ない理由の一つ。
「あんまり遊び過ぎて、刺されたり
しねぇように、気を付けろよ?」
苦笑いして
勇に手を振り
店を出たんだ。
店の外に出て
ケータイの画面を見る。
『俺もたまたま、近くにいます』
いつもあたしが
ここのバーで
飲んでいるって
知ってる子なんだろうと
たいして
気にもしなかった。
エレベーターの前で
一人の男の子がいた。
背が高くて
スラリとした後ろ姿。
靴音を響かせて歩くと
その子が
ゆっくりと振り返った。
その顔が
ケータイで送られた顔だと
すぐに気付いた。
「━━麗香さん?
やっと、会えたね?」
ふわりと笑う
綺麗な笑顔に
胸が高鳴った。
「今連絡してきた、朔矢くん?」
「そう、俺、朔矢です。
今日は急にすいません、よろしくお願いします」
ペコリと頭を下げる
綺麗なお辞儀
初々しさも加わって
好感度丸。
服装も清潔感あるし
育ちも良さそうな雰囲気。
顔を上げて
スッと手を差し出された。
戸惑いながらも
握手する。
しなやかな手。