けだもの系王子
第1章 祐也 、 草食系?
ゆうちゃんがあたしの顔をじっと見つめる。
甘い視線。
艶めく瞳が揺れている。
お互い吸い込まれるようにキスをする。
でもいつもキスだけ。
一緒に晩御飯を作って。
一緒に片付けもして。
お風呂はいつも別々。
それなのに、ベッドは1つだけ。
同棲の始まりにタブルベットを買ったから。
いつも一緒に寝るし。
何度もキスをするのに。
エッチはしてくれない……。
今日もいつものように、一緒にベッドに入る。
「おやすみ、彩ちゃん」
優しくキスをされる。
部屋の電器を消して、正面から抱きつくと優しく抱きしめられる。
でも、それだけで、何もしてくれないの……。
はじめて会ったのは、病院だった。
貧血気味で、目眩がするという、ゆうちゃん。
はじめての印象は、勉強ばかりで体力なさそうな感じ。
今時の大学生。
「栄養失調と、過労だね?君ちゃんと食べてるかい?」
彼を診察したドクターが呆れたように溜め息をついた。
今時、栄養失調?
どんな生活したらそんな事になるの?
「いやあ、バイトと学校で忙しくて、正直そんな暇もなくて……」
恥ずかしそうに髪をかきあげている。
端整な顔立ち、切れ長の瞳と目があって、どきんとする。
「忙しくても普通は食べるだろう?どんなバイトしてるの?」
「力仕事ですかね?」
「そんなひょろくて、食べなきゃ力が出ないだろう?」
「体力には自信があったんだけど、いつの間にか痩せちゃって……」
「とにかくしっかり食べる事だよ。今日は点滴して帰ってゆっくり休むこと、薬も出すから、しっかり飲んで。食べてから薬は飲んで下さいよ?」
「はい、ありがとうございます」
大丈夫かな、この人。
点滴の準備をする。
「じゃあ、腕を出して下さいね?」
あたしの言葉に素直に従い腕を出して、服の袖をめくっている。