けだもの系王子
第3章 隼人、無口系?
昔からお母さんとは馬が合わないらしくて喧嘩ばかりしてたせいか、お見舞いにもろくに行こうとしない。
「じゃあ、行ってくるね」
溜め息をついて、家を出た。
お母さんの入院してる病院は家からわりと近くにある。
歩いて行かれる距離。
もうすっかり外は暗いけど、5月の夜は気持ちのいい暖かさではある。
途中のコンビニで差し入れでも買おうかと思って足を伸ばす。
だけど。
あたしの足はそこでギクリと動かなくなった。
…………………隼人くん。
背が高いからすぐに分かる。
久し振りにその姿を見たような気がした。
あれからまだ何日間しかたってないのに。
ずっと会ってなかったような気持ちになる。
この感覚は、エッチしたから?
肌を触れ合って、お互いの存在を体の奥にまで刻みつけたから。
ひとつになったから、そう思うだけ。
コンビニの店内で、同じ年頃の女の子と笑って話をしている。
隼人くんはあんなに気さくにあたしと話をしない。
いつも無口で無愛想だし。
眩しい笑顔。
眩しい二人。
一瞬コンビニの前で足を止めたけど、そのまままた歩き出す。
お母さんには悪いけど、差し入れはなしだ。
あの二人のいるコンビニに行きたくない。
隼人くんと顔を合わせられない。
ああ、やっぱりあたし……。
隼人くんの事が、好きなんだ……。