けだもの系王子
第3章 隼人、無口系?
「なぁ、なぁ、まどか?
母さん調子悪かったのか?」
お母さんの入院してる病院から帰ってきたあたしは、なんとなくリビングでテレビを見ていた。
珍しくけいちゃんが心配そうに聞いてきた。
「元気だったよ?
もうすぐ退院できそうなんだって」
「なんだよ、びびらせるなよ」
「何が?」
きょとんと首をかしげる。
溜め息をついて、髪をぐじゃぐじゃにかきあげるけいちゃん。
「お前がショボくれてるからなんかあったと思ったんだよ!」
「別に何もないし」
「うそつくなよ!」
「うるさいなぁ」
自分の部屋に戻ろうと重い腰をあげたところで、インターホンが鳴った。
「まどか、行けよ?」
「やだ、部屋に戻るもん」
「立ったついでだ、行けよ」
ぶつぶつ言いながら、玄関のドアを開ける。
「こんな時間にごめん、まどかさん。
今晩は……」
………………隼人くんだった。
切れ長の黒い瞳がじっとあたしを見つめる。
「……えっと、けいちゃん?
取り敢えず上がって?
けいちゃん、隼人くん来たよっ」
言いながら、あたしはすぐに部屋に戻ろうと隼人くんに背中を向ける。
その手をぐっと掴まれた。
「まどかさんに会いに来ました」
「やっ、あたしは別にっ、明日も仕事だからっ……!」
「さっき、コンビニの前にいませんでしたか?」
ギクリ、思わず背中が震える。
「知らないっ」
「塾の帰りによく寄るんですけど、同じ塾の友達と話してたら、まどかさんの姿が見えて……
嫌な予感がしたんで来ちゃいました」
「嫌な予感?」
「まどかさんの顔が泣きそうに見えたんで……
俺の勘違いかもしれないけど、もしそうなら、嬉しいなって……」
「あたしが泣きそうだったら、嬉しいの?」
ああ、だめだ……。
頭の中がごちゃごちゃして……。
だって、そんな聞き方ずるい……。