けだもの系王子
第4章 慶紀、友達系?
怒ってるんだからねっ。
勝手にあたしのファーストキスを奪った罪は重いんだから。
しかもあんな……。
あんな……舌で、ちゅっ、ちゅっ、とか……。
まじありえないっ!
「おい、真香っ、料理運べよ?
なんか顔赤いけど、大丈夫か?」
またしてもけいちゃんがあたしに指図する。
ふっと顔をのぞきこまれ、あたしのおでこに手を置いて、心配そうに揺れる瞳と目が合う。
「やっ、触んないでっ」
とっさにその手を払いのけてしまった。
「なんだよ、お前おかしいぞ」
急に真面目な顔になり、あたしの顔をまじまじ見つめるけいちゃんを、あからさまに避けるように背中を向ける。
黙って料理を運ぶけど、顔が熱いのを感じる。
けいちゃんが気になって、緊張してぎくしゃくしている。
もうあたしの方なんか見てないのに。
妙に気になって息苦しい。
あたし今までどうしていたっけ?
今まで平気だったよね?
なんだっていうの、たかだかキスくらいであんな……。
「すいませ〜ん、お冷や下さい!」
今日はやたらとみんな水を飲むなぁ。
だからホールは忙しくて嫌なんだ。
しかも決まって男性客。
ニヤニヤした視線であたしの体を見られている。
絶対制服のせいだ。
ミニスカートのフリフリだし。
お冷やを注ぎに行こうとして、けいちゃんが庇うようにおじさんの席にスッと行く。
「お前のエロい体に男が群がって忙しくなるから、お前はキッチンにいて欲しいんだよなぁ」
ぼそりと呟かれ、胸がズキンと痛む。
『エロい体。そんなに男を誘惑してどうすんの?』
『あいつとやったなら、俺ともやろうぜ』
『友達ってセフレの間違いじゃねえの?』
今までけいちゃんに言われたセリフ。
確かに友達なら、そう言っていろんな人と付き合ったけど、誰ともそういう関係になってない。