けだもの系王子
第4章 慶紀、友達系?
チョコレートみたいな玄関先で仁王立ちしているけいちゃん。
あたしと目が合うとニヤリと笑い、
「よぉ、来たな、真香っ」
手を振ってる。
なんか普通通りで拍子ぬけしてしまう。
そうだ、こういうやつよ。
素直に思った事を口にするし、喧嘩してもけろっとしてるし、悪いと思ったら素直に謝る。
「おはよう。
あたしに何か他に言う事は?」
あたしにキスした事を謝れ、とばかりに睨んでみる。
けいちゃんの黙ってれば綺麗な顔立ちが真面目な表情になる。
切れ長の瞳がスッと細められる。
「別に俺は悪いとは思ってねぇよ。
好きな女にキスして何が悪い?
それにお前だって、嫌じゃなかっただろ?」
「はあっ?
何言ってんのっ……!」
あたしは動揺して口をぱくぱくしてしまう。
「好きな女って……っ!」
かぁっと顔が赤くなるのを感じる。
「俺は昔から真香が好きだって言ってるだろ?
お前がずっとスルーして他の男と付き合ったりしてたんだろ?」
「そんなっ、だって軽い言い方してたじゃんっ、あんなの信じられないしっ!」
「軽くなんかねぇよっ!」
珍しくけいちゃんが声を荒げた。
あたしの真後ろにある玄関のドアに手をついて、ずいっと綺麗な顔が近付く。
「俺はお前にしか言ってないはずだ。
なぁ、真香……、マジでお前が好きなんだって……、お前にキスしてから、ますますお前の事でいっぱいになって、何も手につかないんだ、何回も一人エッチしちまうほどなんだからなっ!」
一人エッチ……。
すうっとあたしの瞳が細くなる。
『なぁ、やらせろよ、真香』
なぁ、なぁ、言ってた事を思い出してしまう。
「けいちゃんは結局あたしとエッチしたいだけなんでしょ?
エッチしたいだけで誰でもいいんじゃない?
そんなにやりたいならどうぞ?
やればいいじゃんっ!」
叫んでぎゅっと目を閉じてしまう。