けだもの系王子
第4章 慶紀、友達系?
優しいキスに頭がぼうっとなる。
もう、だめ、限界……。
立っていられないかも……。
足ががくがくする。
………………………その時だ。
「ねぇ、けいくん?
そろそろまなちゃんを解放してあげてよ、限界ぽいから。
リア充もいいけどさすがに家の前ではね?
兄貴としては複雑なんだけど?」
この声は。
大学生の兄の結城だ。
さぁっと青ざめるあたしをけいちゃんがそっと離す。
「お兄ちゃんっ?
いつからいたのっ?」
背後にしらーとした様子のお兄ちゃん。
優しくてイケメンなのに、女運が悪い。
茶色い瞳、端正な顔立ち、背も高い。
「さっきからいたんだけどね?
盛り上がってるとこ悪いと思って……、まぁ、その、取り敢えず、まなちゃんをさっさとデートに連れてっちゃいなよ」
追い払うようにひらひら手を振ってる。
けいちゃんが驚いたように目を見開く。
「えっ?
いいんですかっ?」
「いいも何も……早くくっつけばいいじゃないの?って感じなんでね?
最近のまなちゃんの様子見て余計に思ったから、家も迷惑なんで早く行っていいから」
「ありがとうございます、結城さんっ!」
けいちゃんが嬉しそうに笑って、何故だかあたしの体がむんずと掴まれる。
「えぇっ、ちょっとけいちゃんっ!」
悲鳴をあげるあたしの体がけいちゃんの肩に担がれている。
「いいね、青春だね。
ああ、一応優しくしてあげてね?」
少し睨むような表情のお兄ちゃんに頭を下げているし。
「失礼しますっ!」
お前は体育会系かっ。
ぎゃあぎゃあ叫ぶあたしを無視して、強引に連れ去られてしまった。
「舌噛むから口を閉じろよっ!」
なんであたしは運ばれてんの?
せめてお姫様抱っこが良かったのに、赤ちゃん抱っこかいっ。
けいちゃんの背中越しに振り返るとお兄ちゃんが笑いながら手を振っていた。