けだもの系王子
第5章 結城、優男系?
思わず涙が溢れる。
ふと隣から鼻水の音がして、結城のほうに目をやると、めっちゃ泣いていた。
びっくりした。
綺麗な瞳から伝う涙は次から次へと溢れる。
堪らずハンカチを出して鼻を押さえてるけど。
男の人も普通に泣くんだ……。
あたしはティッシュを出して結城に渡した。
「ありがとう……」
めっちゃ鼻声だ。
びっくりしてあたしの涙が引っ込んだ。
「……ん、なんかいい匂い……」
ティッシュで鼻水を押さえながら、くんくん、鼻を吸っている。
「ティッシュの匂い?」
「……ん、なんか違う?」
すんすん、結城があたしに近付きあたしの長い髪を手に取る。
すんすん……。
「……どうしたの?」
結城の動きがピタリと止まる。
それから急に立ち上がり、
「……トイレっ……!」
慌てたようにトイレへ向かう。
あたしは首をかしげた。
映画を見終えて、映画館を出たけど、結城の顔が赤いのに気付いた。
泣いたからかな?
映画の感想を二人でいい合って、適当に歩いてたら急に雨が降って来た。
コンビニに傘を買いに行くよりも、あたしのアパートに行くほうが早い。
そう判断して雨宿りに結城を家に連れて行く。
2階建ての小さいけどお洒落な造りのアパート。
家に結城をあげて、バスタオルや着替えを出す。
「ありがとう」
服を脱いで体を拭く結城の姿に無駄にときめいて、慌てて自分も別の部屋で着替える。
「乾燥機あるから、全部出して?」
濡れた服を貰いに行く。
あたしの大きめなTシャツをぴちぴちに着ている。
下はタオルで巻いて悩んでるけど、笑っちゃいけない。
「……千尋?
その格好は?」
「えっ?
いつもの普段着だけど?」
デニムの短パン、冷えたから、長めのニットのセーター。
「下ははいてるの?」
「うん?」
ニットのセータをピラリとめくって見せる。
結城の顔がかぁっと赤くなった。