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けだもの系王子

第5章 結城、優男系?







いつの間にか全裸になってるあたしと結城も服を脱いで肩を震わせている。




窓の外は激しい雨が降って雨音がうるさいくらいに響いている。




嫌な記憶を思い出す。




『若いのに凄い胸だね?
お母さんに似たのかな?
もう少しこっちにおいで?』




あれは義理のお父さん。




いやらしい笑い。




あたしに触れる手が無償に恐くて、気持ち悪くて鳥肌がたった。




男の人は皆同じ。





やらしい視線、やらしい手付き。




皆あたしの胸しか見ていない。




エッチな事しか考えてない。




気持ち悪い、大嫌いだった。




『男の人には逆らえない衝動みたいなのがあるみたいでね、だから自分の身は自分でしか守れないのよ?』




そう言って教えてくれたお母さん。





だけどお母さん。





あたしは結城のこの手が嫌いじゃない。




優しく気遣うような手付き。




だけど熱い熱情を感じる。




もっと触れて欲しいとさえ思う。




この行為がただの彼の衝動だとしても。




それでもいいとはじめて思う。




泣かないでいいのに。




泣かないで、もっと、あたしに触れて欲しいの……。




この気持ちはなに?




胸が締め付けられるのはどうして?





「千尋、嫌なら僕を拒んで、だったら止まれるから、お願いだ、君を大事にしたいんだ……!」




思い詰めたような綺麗な茶色い瞳に、野性的な光りが瞬く。




迷うように苦しそうに揺れている瞳に、もっと見つめられたいと正直思う。




結城にとっていけない事?




こんな事を言ってしまったら友達にももどれない?




そんな恐怖がつきまとうけどあたしは自分に正直に口を開く。




「結城なら嫌じゃない。
だから、泣かなくていいよ?」




なるべくなんでもない事のように言う。




ああ、そっか、あたしは結城が好きなんだ。




だから、後悔しない。




はじめては好きな人だと決めていたから。





こんな幸せな事なんてない。





そう思えた……。

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