けだもの系王子
第5章 結城、優男系?
腕を掴まれて引っ張られる。
結城の大きな手。
仕方なく足を止めて息をつく。
芽以も一緒だ。
あたしと結城を交互に見てそっとあたしの手を離す。
「どうして逃げるの?
僕の事嫌になった?
あんな事したから……怒ってるの?」
結城の茶色い瞳が不安そうに揺れている。
「違う、怒ってなんかない……」
首を振る。
逃げたのは何でだろう?
昨日の今日で気まづいから……。
「僕の事嫌になった?
もう友達にもなれない?」
「友達なんか嫌……」
結城の瞳がすぅっと陰った。
「ごめん、千尋、許して欲しい……。
だからお願いだから嫌いにならないで……。
好きなんだ。
千尋の事、大好きなんだ」
ぎゅっと抱きしめられる。
結城は背が高いからすっぽり抱きしめられて何も見えない。
「おぉ〜!」
回りで歓声が上がり、拍手の音がする。
パチパチパチパチ。
「えっ?」
「なにっ?」
顔を上げる。
ここは大学の校内。
授業を受けに行く学生が何人も通ってあたし達を見ている。
ニヤニヤしながらヒューって言う人もいたり拍手しながら通り過ぎる人もいる。
かぁっと赤くなるあたし達。
「なんなの、あんたっ!
何であんたみたいなおっぱいお化けが結城と?
冗談じゃないわよ、離れなさいよっ」
キーキー叫びながら近付く女の子に芽以が近付き肩を組む。
「はいは〜い、あんたの話はあたしが聞いてあげるから、こっちにおいでよ、可愛いじゃん、名前は?」
「なによあんたっ、ちょっと結城〜?」
芽以があたし達を見てジェスチャーで手を振る。
「さっさと行きなよ〜、イチャイチャしにさ〜」
その言葉に結城の顔がぱぁっと輝く。
「ありがとう!」
手を繋がれる。
友達じゃない恋人繋ぎ、全部の指が絡められて顔が赤くなるのを感じた。
この手は嫌いじゃない。
大好きだ。