けだもの系王子
第6章 要、優等生系?
玄関の覗き穴を覗くとやっぱり聖ちゃんがいた。
「聖ちゃん、帰って?
ドアも開けないからね?」
「どうして急に冷たくなったの?
……あいつと何かあった?」
「……っ、何もないっ……」
「昨日電話してた時……、誰かと一緒だった?」
ギクリとする。
「早希ちゃんの喘ぎ声を散々聞いて来たから、分かるんだ」
……バレてるの?
「生まれた時からずっと一緒で家族同然で……
そんな僕から本当に逃げられると思ってるの?」
ガチャリ。
アパートのドアノブが回る。
驚いているあたしの目の前で、家の玄関のドアが開いた……。
天使のような綺麗な笑顔にゾクリとする。
「これが何か分かる?」
聖ちゃんの綺麗な手のひらの上に乗っている物。
合鍵だ。
「どうしてっ?」
「やっぱり親子だよね?
早希ちゃんのお母さん、玄関の上に鍵を良く置いてるからね?
ちょっと借りただけだよ?」
「犯罪だよっ、泥棒だよっ、ダメだよ聖ちゃん!」
「どう言われたっていい。
なりふりかまっていられないんだ。
あんなに体を重ねたのに、あっさり他の男に奪われるなんて有り得ないし、許さないって言った筈だよ?」
怖い顔。
この顔には見覚えがある。
はじめて聖ちゃんに抱かれた時……。
あの時と一緒だ。
頭の中で警鐘が鳴り響く。
嫌だ。
先輩……っ。
あの時も助けて欲しいって浮かんだ顔は先輩だったのに。
同じ事を繰り返すの?
嫌だ。
先輩以外とは、もう考えられない……!
聖ちゃんがあたしに近付き両肩を掴まれた。
ゾクリとする。
ぎゅっと目を閉じる。
「……要っ……!助けてっ……!」
「……このアパート良く声が聞こえるから……
まる聞こえなんだけど?
うるさいよ?」
良く通る低い声。
あたしの大好きな声。
いつの間にか要が聖ちゃんの背後に立っていた。