けだもの系王子
第6章 要、優等生系?
「あんた今隣の家から出て来なかった?
そんな、まさか、そんなのって……っ」
聖ちゃんの瞳が驚いたように大きく見開かれる。
「隣に住んでいるんだから当然だろう?」
「隣に住んでいるの?
……そうか、そういう事か……。
すごいね、早希ちゃん、君がそこまでするなんて思いもしなかったよ」
「何を言って……」
先輩が隣に住んでいたのは偶然だ。
「だけど僕は諦めないからね。
せいぜい他の奴に奪われないように気を付けてね?
先輩?」
言いながら、プイっと顔を背ける。
そのまま遠ざかる後ろ姿を呆然とした思いで見つめる。
先輩が息をついて、あたしの顔をじっと見つめた。
「……すぐに鍵を替えてもらった方がいい。
不動産に連絡して、金はかかるけどその方が安全だ。
それまで君は……俺の家に来ないか?」
「ええっ?」
「君がこのままでいいって言うならいいけど……。
いくら隣に住んでても毎回タイミング良く助けられるとは限らない。
……まぁ、俺の家も安全とは言えないけど……」
スルリ、あたしの髪を長い指ですくって唇に寄せる。
艶っぽい仕草にゾクリとして。
甘い瞳があたしの目を見つめる。
「何もしないとは言えないけど……
どうする?」
そんなの……。
行くに決まってるしっ……。
あたしは要の言うとおりに行動した。
その日から。
あたし達の生活が始まったんだ……。