けだもの系王子
第6章 要、優等生系?
新しい鍵をとっくに貰っていたんだった。
俺が連絡してたまたま鍵は俺の手にある。
渡せなかった。
渡したくなかったんだ。
もう少し一緒に暮らしていたい。
もう少し。
ずるずる渡しそびれていたんだった。
この関係が壊れるのが嫌で。
恐くて言い出せない。
好きな人がいるって聞いた時から。
不安だった。
工藤 聖矢じゃないのなら。
いったいどこのどいつなんだ。
あいつかもしれない。
気になってしょうがなくて。
嫉妬して気が狂いそうだ。
聞きたいけど聞くのが怖い。
勉強なら簡単なのに、答えがすぐに分かるから。
だけど答えが分からない。
早希の気持ちが分からない。
酔っ払った勢いで体を重ね、工藤との事もあるし、淫乱なのかなと思ったりもした。
大学でも男友達は多い。
女の子の友達も多いけど。
分からない。
女は分からない。
だから苦手なのに、どうしてか、昔から目で追ってしまう。
その存在感。
可愛い笑顔。
工藤 聖矢は昔は苛めに合っていた。
俺は風紀委員としていじめや喧嘩の情報があれば駆け付けて注意を促す。
時には暴力で解決する事もあった。
工藤がらみの苛めには必ず早希の姿があった。
勇敢にも女の子一人で下級生とは言え何人もいる中で。
トイレでは水をぶっかけたり。
中庭では苛めてる奴を溜め池に突き落としたり。
空手を少し習っていたらしく、喧嘩してる姿を見た事もある。
一生懸命な姿に好きになった。
……懐かしいな。
「何を笑ってるんだよ要?
とにかく帰ったら好きだと言えよ?
女の子はその一言で大抵解決するんだよ!」
昔藤谷の事が好きだと言っていた樹。
いつになく本気で心配している。
「分かったよ」
神妙な顔で頷いた……。