ふたり、溺愛中
第9章 紫のスーツの彼は
「お待ちしていました。
いらっしゃいませ、姫様」
「こんばんは、煌さん」
___あの日から。
悠さんのお店への行き方を知った私は、時々遊びに行くようになったの。
「今日も、いつもの奴ですか?」
「うん。お願いします」
ここでは、お酒が飲めない人でも楽しめるようにって悠さんの気遣いで、ノンアルコールもあるんだよね。
それが、私の注文したヴァージンスクリューって言うカクテル。
悠さんが、私の為に出してくれたものだよん。
「そうそう、姫様のおかげでおれ、営業成績上がったんですよ!」
「わぁ、そうなんだ。
おめでとう」
「ありがとうございます!」
席で私の相手をしてくれるのは、初日に指名したこの煌さんなんだけど。
会話をしながら、でも視線はついつい店内を見渡し、悠さんの姿を探してるの。
今日はいないのかなぁ。
社長さんだから、他の事務的なお仕事とかで忙しいのかも?
いつも何時頃、ここに来るとかあるのかな?
「…姫様?」
「えっ
あ…はいっ」
「楽しく、ないですか?
すいません、おれ、自分の話ばっかで…」
「だ 大丈夫だよぉっ
……あ、そうだ。煌さんに、訊いてもいいかなぁ」
そうだよ。
この煌さんだったら、悠さんの事、知ってるよね。