テキストサイズ

ふたり、溺愛中

第12章 その婚姻届は、間違いだよね?

現れた声の主が私の溜まった涙を指で拭ってくれ、ようやく誰かがわかった。




「ずっと待ってたんですけど、遅いから心配してたんですよ。
一体どうしたんですか?
何が、あったんですか?」



「煌…さん…つ」



いつものスーツ姿で立つ煌さん。

そっか。お店は営業が始まって、もう随分経つもんね。
煌さん、行くって言った私を心配して、ここまで来てくれたんだぁ。




「ごめ…なさいっ」


「謝んなくていいですよ!
それより、どうして泣いてんのか、教えてくれませんか?」



どうして…?

それは、旦那さまである悠さんが、他の女性と結婚しようとしてたから?

ずっと信じてたのに、裏切られた事に気付く事もできなかったから?


そんな事、煌さんに話すわけには…………





「…あの、私なら大丈夫です。
ちょっと落ち込んでただけなんで、すぐ治ります」



そんなわけないもん。
でも、煌さんに心配かけちゃイケナイからね。

だけど今夜は、とてもお店でゆっくりしようとか、そんな気分になれないや。

悪いけど___…





「じゃあ姫さま!
今夜は嫌な事忘れて、パァーッと呑みましょう!」

「ひゃあっ」



グイッと腕を引かれたかと思うと、私は煌さんによって立たされた。


急に立ち上ったものだからクラっとめまいがしたんだけど、それも煌さんによって倒れないように支えてくれたの。




ストーリーメニュー

TOPTOPへ